記録

仕事と、母のこと

2018-04-30
母は、 よく文章を書いている。 ノートだったり、 最近は、 ブログだったり。 何を書いているのかは、 あまり知らない。 聞いたこともあるが、 「大したことじゃないの」 と言われて、 それきりだった。 母の名前は、 自分の名前と、 少し似ている。 読み方も、 意味も、 たぶん、近い。 昔、 「名前ってね、  最初に贈られるものだから」 と言っていたことがある。 そのときは、 どういう意味なのか、 よく分からなかった。 今も、 たぶん、 分かっていない。 ただ、 母は、 自分の名前を呼ぶとき、 少しだけ、 声がやわらぐ。 叱るときでも、 急かすときでも、 名前だけは、 いつも丁寧だった。 ある日、 洗濯物を干しながら、 母が、 急に言った。 「あなたの名前、  呼びやすくて好きなの」 理由を聞くと、 洗濯ばさみを止めながら、 「口に出すとね、  ちゃんと始まる感じがするから」 と、 少し考えてから、 よく分からない答えを返してきた。 母は、 そういう説明の仕方をする。 意味があるようで、 はっきりしない。 でも、 そのまま受け取っても、 困らない言葉だった。 母がブログを書いているのも、 たぶん、 誰かに見せるためではない。 自分の中にあるものを、 外に出して、 並べておきたいだけなんだと思う。 書いたあと、 ときどき消して、 ときどき残している。 それを、 自分は、 少し離れたところで 見ている。 声をかけることは、 あまりない。 でも、 母が何かを書き終えて、 ふう、と息をつくときの顔は、 前より、 少しだけ、 軽く見える。 それでいい、 と思っている。