記録

引き取られた日のこと

2018-04-15
十二歳のとき、 今の両親に引き取られた。 正直、 その場ですぐに 嬉しいとか、 安心したとか、 そういう気持ちには ならなかった。 あとから、 ゆっくり来た。 最初は、 どう振る舞えばいいのか、 よく分からなかった。 父は、 多くを語らない人だった。 必要なことだけ言って、 あとは、 静かにしている。 母は、 必要以上に 世話を焼かない人だった。 それが、 ありがたかった。 食卓で、 無理に話題を振られない。 黙っていても、 怒られない。 おかわりも、 無理に勧められない。 ある日、 夕飯を食べていたら、 母が、 こちらを見て、 「ご飯、  口に合わなかった?」 と聞いてきた。 慌てて、 「美味しいです」 と答えた。 少し大きな声に なってしまった。 母は、 一瞬きょとんとしてから、 くすっと笑った。 その笑い方が、 叱る前のものでは なかったので、 少し安心した。 「よかった」 そう言って、 母は台所に戻った。 その背中を見ながら、 ここでは、 間違えても、 大丈夫なのかもしれない、 と思った。 それから、 少しずつ、 力を抜いて ご飯を食べられるようになった。