本のこと
2018-04-08
子どものころから、
本ばかり読んでいた。
外で遊ぶより、
図書室にいる方が楽だった。
静かな場所が好きだったし、
本の中では、
自分が黙っていても
特に問題がなかった。
施設にいたころ、
廊下ですれ違うと、
「また本?」
とよく言われた。
嫌な言い方ではなかった。
むしろ、
半分あきれたような、
半分あきらめたような声で、
それが少し安心だった。
一度、
「それ、面白い?」
と聞かれて、
うまく答えられずに
本を差し出したことがある。
相手は、
数ページ読んで、
「難しいね」
と言って返してきた。
それで、
なんとなく、
お互い納得した。
あるとき、
図書室にいたら、
司書さんが声をかけてくれた。
「そんなに読むなら、
これも読んでみる?」
そう言って、
少し厚めの本を
棚の奥から出してきた。
正直、
内容はあまり覚えていない。
でも、
そのときの司書さんが、
本を渡しながら
少し嬉しそうだった顔は、
今でも思い出せる。
誰かが、
「この子は、
ここにいていい」
と思ってくれた気がした。
本を読んでいると、
時間の感覚がなくなる。
気づくと、
夕飯の時間を過ぎていて、
名前を呼ばれて、
少し慌てて本を閉じる。
それが、
いいことなのか、
悪いことなのかは、
今でも分からない。
ただ、
静かでいられる場所があって、
そこに本があったことは、
間違いなく、
助けられていたと思う。